「せんべい汁」という料理をご存知でしょうか。青森県八戸市を中心に古くから親しまれている郷土料理で、南部せんべいが入っているのが特徴的な鍋物です。この記事では、せんべい汁の特徴や作り方のポイントについて詳しく解説します。記事後半ではおいしいせんべい汁のレシピもご紹介しているので、ぜひ最後までご覧くださいね。
せんべい汁とは?青森・八戸の郷土料理の特徴や作り方を紹介
- 目次
- せんべい汁とは
- 起源
- 全国的に知られるようになったのは平成になってから
- そもそも「南部せんべい」とはどんな食材?
- せんべい汁の特徴
- せんべい汁をおいしく作るポイント
- せんべい汁のレシピ
- 青森県の郷土料理せんべい汁を味わってみよう
せんべい汁とは
せんべい汁は、八戸市を中心とした青森県の南部から岩手県北部にかけて伝わる郷土料理です。
肉や魚などでとっただしに野菜やきのこ、糸こんにゃくなどを入れて煮込み、この地域の伝統食品である「南部せんべい」を割り入れます。だしは鶏をベースにした醤油味が一般的ですが、鯖やタラなどの魚を使った塩味のものや、馬肉を使ったみそ仕立ての鍋など、バリエーションも豊富です。
起源
せんべい汁の起源については諸説ありますが、一説では江戸時代の後期に家庭で作ったせんべいを鍋やみそ汁などに入れて煮たのがはじまりと言われ、約200年の歴史があります。
戦前は各家庭でせんべいを焼いていましたが、戦後、製造業者によって汁に入れても煮崩れしにくい、汁物専用のせんべいが開発されました。
全国的に知られるようになったのは平成になってから
せんべい汁は戦前から家庭でよく食べられていましたが、この呼び名が定着したのは平成に入ってからのこと。2003年に旗揚げした「八戸せんべい汁研究所」という市民団体が中心となり、せんべい汁を軸としたまちおこし活動を始めたことがきっかけとなっています。
こうした取り組みによって全国的に有名な郷土料理となったせんべい汁は、現在では家庭だけではなく、飲食店やイベントなどで観光客にも親しまれるようになりました。
💡ワンポイント豆知識
この団体は、実はご当地グルメのイベントとして有名な「B-1グランプリ」を企画したことでも知られているんですよ。
そもそも「南部せんべい」とはどんな食材?
そもそも南部せんべいとはどのような食材なのでしょうか。
南部せんべいは、旧南部藩の領地だった青森県南東部から岩手県北部にかけて古くから親しまれてきた伝統食品です。
「せんべい」といってもお米から作られるお菓子とは異なり、小麦粉と塩、水が原料で、これらの材料を混ぜてできあがった生地を鉄製の型で丸く焼いて作られます。戦前、農家では各家庭でこの鉄製の型を持っていたのだそうです。この地域は冷害が多く米があまり収穫できなかったため、せんべいは主食であり、貴重な保存食でもありました。
「おつゆせんべい」とも呼ばれる
汁物専用の南部せんべいは通称「白せんべい」や「おつゆせんべい」とも呼ばれます。
煮込んでも型崩れしにくく、汁を吸うとモチモチとした食感になるのが特徴です。肉や野菜から出た旨味が染み込んだせんべいがとてもおいしく、シンプルながら奥深い味わいが楽しめます。
せんべい汁の特徴
ここで、せんべい汁の特徴を詳しく見ていきましょう。
味は3種類
先ほど触れましたが、せんべい汁の味は3種類あります。
・鶏(醤油味)
もっともスタンダードなのが、鶏だしをベースにした醤油味のものです。
具材は鶏肉、ごぼう、にんじん、大根などの野菜、きのこ類、糸こんにゃくなど。鶏肉の代わりに豚肉や鴨肉などを使うこともあります。さまざまな具材から出る旨味が混ざり合い、シンプルながら奥深い味わいが楽しめますよ。
・魚(塩味)
鯖や白身魚のタラなど、魚でだしを取った塩味のスープに少しだけ醤油を入れて仕上げます。
鯖は焼き鯖や水煮缶を使用することが多いそうですよ。魚の旨味が溶け出したスープが絶品です。
・馬肉(みそ味)
八戸市は馬の産地として知られており、古くから馬肉を使った鍋を食べる習慣があるそうです。
馬肉と野菜をたっぷりと入れたら、みそで味つけします。馬肉を使った鍋は多くの地域で食べられていますが、ほとんどは醤油味で作られることが多く、でみそ味は珍しいそうですよ。
栄養バランスもよい
せんべい汁は、これ一品でたんぱく質(肉や魚)、炭水化物(せんべい)、野菜がそろった栄養バランスのよい料理でもあります。せんべいさえ手に入れば、ほかの具材は一般的なスーパーで買えるものが多いので、ご家庭で手軽に作ることができるのもうれしいポイントです!
せんべい汁をおいしく作るポイント
せんべい汁の特徴を知ったところで、おいしく作るためのポイントをご紹介します。
旨味を引き出す
鶏肉や野菜、きのこ類を煮込み、だしを取ります。野菜やきのこ類は水から入れ、肉は沸騰してから加えます。具材から出る旨味が溶け出したスープが、せんべい汁をおいしく仕上げてくれますよ。旨味たっぷりのスープが染み込んだせんべいが絶品です。
せんべいを入れるタイミングが重要!
せんべいは、最後に加えるのがポイント。すべての具材に火が通ったら、せんべいを割り入れて軽く煮ます。せんべいは1枚を3~4分割にしましょう。これより小さく割ると、やわらかくなりすぎてしまいます。
せんべいの様子を見ながら煮込む
せんべいが程よくやわらかくなるまで煮込みます。おすすめは、スパゲティでいうと「アルデンテ」の状態。せんべいの縁はとろりとして、中心は少し歯ごたえが残るくらいがおいしいですよ。ちょうどよく食べ頃に煮込んだせんべいは、モチモチ、シコシコとした独特の食感が味わえます。
せんべい汁のレシピ
ここでせんべい汁のレシピをご紹介します。スタンダードな鶏だしのせんべい汁に加えて、コンソメスープで作る洋風のレシピもピックアップしました。どちらも簡単に作れておいしいので、ぜひ作ってみてくださいね。
東北郷土料理 せんべい汁
ほっこりおいしい、せんべい汁のレシピをご紹介します。細切りにした野菜と鶏もも肉から旨味が溶け出したスープが絶品!シンプルながら、滋味深い味わいでとてもおいしいですよ。こちらのレシピではせんべいを後からのせていますが、お好みの食感になるまで煮込むのももちろんおすすめです。
新感覚 ベーコントマトのせんべい汁
こちらはちょっと変わった、コンソメスープでいただくせんべい汁です。せんべい自体は薄い塩味でクセがないため、洋風のアレンジも意外とマッチしますよ。ベーコンの旨味とトマトの酸味が効いたスープを吸ったせんべいがとてもおいしいので、ぜひお試しください。
青森県の郷土料理せんべい汁を味わってみよう
今回は、青森県八戸市を中心に親しまれている郷土料理「せんべい汁」について解説しました。一般的な鶏だしに加え、魚や馬肉を使ったものもあり、バリエーション豊富なのも魅力のひとつです。シンプルな鶏だしのものはご家庭でも簡単に作れるので、ぜひご紹介したレシピも参考にしていただき、東北の味を堪能してみてくださいね。
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