豊かな風味と鮮やかなオレンジ色が魅力の「あんず」。ジャムやお酒の材料としてよく使われますが、実は皮ごとそのまま生で食べられるんです!この記事では、生のあんずの食べ方や加工方法、さらに特徴や旬、主な産地などを解説します。記事後半では、あんずを使ったおすすめのレシピもご紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
あんずはそのまま食べてもOK!皮ごと食べられる「あんずの食べ方」をご紹介
- 目次
- あんずとは?
- あんずはそのまま食べられる?
- そのまま食べるのがおすすめのあんずとは
- あんずのおいしい食べ方
- あんずの旬と産地や歴史
- あんずを使ったレシピをご紹介
- あんずの魅力をしっかり楽しもう
あんずとは?
「あんず(杏)」はバラ科アンズ属の植物で、英名では「アプリコット」と呼ばれています。形は梅の実に似ていて、熟すと鮮やかなオレンジ色に変化するのが特徴です。
そして、熟したあんずからは花のような華やかで甘い香りが漂います。 あんずの実はやわらかくデリケートで日持ちしないうえ、在来種のあんずは酸味が強く、そのまま食べるには適していません。そのためドライフルーツやジャム、シロップ漬けなどの食べ方が一般的です。
あんずはそのまま食べられる?
実は、あんずはそのまま生で食べられる果物です。酸味が強いイメージもありますが品種によっては甘みの強いものもあります。
特に生食用として栽培されている品種であれば、そのままでもおいしく味わうことができますよ。
まずは生のあんずの食べ方をチェックしてみましょう。
あんずの食べ方
①あんずのくぼみに果物ナイフを当てて、種に届くまで刃を差し込みます
②種に沿って実にぐるりと切れ目を入れます
③切れ目から両手でやさしくひねると、きれいに2つに分かれます
💡【ポイント】💡
熟したあんずは実が離れやすいので、簡単に種を取り出せますよ。
あんずは皮ごと食べられる?
あんずは皮ごと食べられる果物です。生食用の品種は皮ごと食べることを推奨しているあんず農家もいるので、冷やしてそのままかぶりつくのもおすすめ!
皮の食感が気になる場合は、あらかじめ皮を剥いてもおいしくいただけますよ。
そのまま食べるのがおすすめのあんずとは
あんずには、甘みが強く生で食べやすい品種もあります。ここでは、生食に向いている品種を「西洋種」「東洋種」「交配種」の3タイプに分けてご紹介します。
| 項目 | 西洋種 | 東洋種 | 交配種 (西洋種×東洋種) |
|---|---|---|---|
| 主な品種 | ゴールドコット |
信月、信山丸 |
おひさまコット、ニコニコット、信州サワー |
| 糖度の目安 | 約12〜13度 |
約10度 |
約12〜13度 |
| 特徴 | 甘みが強く、ジューシーで香りも豊か |
酸味が強めだが甘みも感じられる |
高糖度で甘みが際立ち、生食用に栽培 |
| 生食の向き | ◎ |
◯(甘酸っぱい味が好みの方向け) |
◎ |
甘みを重視したい方には、西洋種や交配種がおすすめです。爽やかな酸味と甘さをバランスよく楽しみたい方には、東洋種の一部品種も向いていますよ。
あんずの選び方
生食のあんずを選ぶ際は色が濃くよい香りがして、触るとやわらかいものを選びましょう。
反対に色や香りが薄く、実がかためのあんずは、常温で半日から数日追熟させると甘みが増しておいしく食べられます。
また、ずっしりとした重さがあるものは、実が詰まっておりジューシーですよ。
あんずのおいしい食べ方
酸味の強いあんずにも、おいしい食べ方がたくさんあります。あんずはデリケートで日持ちがしないからこそ、保存が利くように昔からジャムやコンポートなど、さまざまな形に加工され親しまれてきました。
ここでは、あんずの風味を最大限に活かした食べ方をご紹介します。
ドライフルーツ
あんずはドライフルーツにすることで水分が抜け、甘みと酸味がギュッと凝縮した濃厚な味わいになります。
そのまま食べるのはもちろん、刻んでヨーグルトやグラノーラのトッピングにするほか、クッキーやフィナンシェなどに入れると彩りや風味を楽しめますよ。
意外に思えるかもしれませんが肉料理や煮込み料理とも相性がよく、酸味やコクが加わり奥行きのある味わいになるので、機会があったらぜひ試してみてくださいね。
砂糖漬け
あんずの砂糖漬けは「甘漬け」や「甘酢漬け」とも呼ばれ、あんずの生産地である信州では昔から作られている漬物のひとつです。
作り方はご家庭やお店によって異なりますが、生のあんずを塩漬けにし、その後塩を抜いたら、今度は重石をのせて仮漬けをします。その仮漬けを終えたら砂糖を加えて本漬けにするという、丁寧な工程を経る食べ方です。
この手間をかけることであんずの余分な水分とアクが抜けて、砂糖の甘みが果肉の奥までしっかり染み込むのだとか。パンや焼き菓子に加えると、あんずの食感や甘酸っぱさが楽しめますよ。
シロップ漬け
ほどよい酸味も楽しめるシロップ漬けもあんずの定番の食べ方です。
作り方はご家庭やお店などによって異なりますが、さっと茹でたあんずを煮沸消毒した瓶に隙間なく詰め、お湯をわかして砂糖を加えて作った熱いシロップを加えて作ります。
あんずはそのまま食べたり、ゼリーやババロアなどの冷たいデザートに使ってアレンジするのもおすすめ!また、シロップはかき氷にかけるほか、水割りや炭酸割りにして飲むこともできます。
コンポート
あんずのおいしさを堪能したいときにおすすめなのがコンポートです。シロップ漬けと似ていますが、こちらはあんずをシロップで煮て作ります。
そのまま食べれば、あんずの華やかな香りとほどよい酸味、上品な甘みを味わえますよ。また、パフェやアイスクリームに添えたり、シロップ煮と同じようにかき氷やドリンクにして楽しめます。
💡【クラシルシェフのコツとポイント】💡
ご家庭でも手軽に作ることができますが、保存期間はそれほど長くないため、数日で食べ切れる量を作るのがおすすめです。
ジャム
あんずジャムは、あんずの食べ方として一番馴染みがあると言っても過言ではないかもしれません。一般的にはあんずと砂糖を鍋で煮詰めて作ります。
少ない材料で手軽に作れるだけでなく、さまざまなアレンジができるのも魅力です。スイーツであれば、ジャムクッキーやナパージュなどお菓子作りにも活躍します。
また、肉料理とも相性がよく、ドレッシングやソースに加えれば、あんずの酸味がアクセントになった奥深い味わいを楽しめますよ。
💡【クラシルシェフのコツとポイント】💡
あんずは酸が強いため、アルミ鍋や鉄鍋を使うと鍋が腐食したり、食材の味や色が変化する場合があります。あんずを加熱する際は、ホーロー鍋やフッ素樹脂加工された鍋を使うことをおすすめします。
ジュースやお酒
ホワイトリカーと氷砂糖をあんずと一緒に漬け込んでお酒にしたり、ご紹介したコンポートなどのシロップを水や炭酸で割ってジュースにするなど、飲み物としても楽しめます。
カクテルやスムージーのベースに使うのもおすすめです。
💡【クラシルシェフのコツとポイント】💡
シロップ漬けやコンポートを作ってできあがったシロップやあんず酒は、煮込み料理のかくし味やケーキの風味づけなどにも使えます。あんずのフルーティーで甘酸っぱい味わいが料理のアクセントになりますよ。
あんずの旬と産地や歴史
あんずの特徴やおいしい食べ方を知ったところで、続いてはあんずの旬や産地、歴史を確認してみましょう。
あんずの旬と日本の産地
あんずの旬は6月中旬から7月上旬のわずか数週間と短い期間です。生育には夏に雨が少なく、水はけのよい涼しい気候を好むこともあり、日本では青森県と長野県が主な産地となっています。
実際、この2県であんずの国内生産量の9割以上を占めているほどです。
💡【ワンポイント豆知識】💡
特に長野県千曲市の森地区は「日本一のあんずの里」として知られています。信州は関東から南の地域に比べると春の訪れが少し遅い地域。桜よりひと足早い3月下旬から4月上旬に美しい薄いピンク色をしたあんずの花が咲き、多くの人が花見に訪れるそうです。そしてあんずの花が咲き始めた頃、ようやく信州にも春の足音が聞こえてきます。
あんずの歴史
そもそもあんずは、中国北部や中央アジアが原産といわれています。中国では何千年も前から、種の中にある「杏仁(きょうにん)」を漢方薬として利用するために栽培されていました。
日本へは平安時代には、薬の材料として中国から伝わっていたようです。当時は「唐桃(からもも)」と呼ばれていましたが、江戸時代ごろから「あんず」と呼ばれるようになったのだとか。
果物として食べられるようになったのは、明治時代に入ってからとされています。ちなみに「杏仁」は「杏仁豆腐」などのお菓子の材料としても使われています。
あんずを使ったレシピをご紹介
ここからは、あんずを使ったレシピを5つご紹介します。ジャム作りから、ジャムを活用したスイーツや炒め物まで、さまざまなジャンルから厳選しました。ぜひチェックして、実際に作ってみてくださいね。
手作りあんずジャム
旬のあんずが手に入ったら、ぜひ作っていただきたいのがあんずジャムです。材料はあんずのほか、グラニュー糖とレモン汁のみ。コトコトじっくりと煮詰めればできあがります。あんずの風味が凝縮されたジャムは、一口で虜になるおいしさ!トーストはもちろん、ヨーグルトやアイスにかけるのもおすすめです。
あんずジャムのパウンドケーキ
アプリコットジャムと、あんずの種からとれる杏仁霜(きょうにんそう)が入ったパウンドケーキです。ジャムの甘酸っぱさに加え杏仁霜が上品に香り、リッチな味わいを楽しめますよ。あんずの魅力をたっぷり感じられる、毎日のティータイムやおもてなしにもぴったりの一品です。
あんずジャムのクッキー
続いてもアプリコットジャムと杏仁霜を使ったスイーツレシピをご紹介します。絞り出しにした花のような形とあんずジャムのオレンジ色が華やか!見た目だけでなく風味もよいので、パーティーやおもてなしにもおすすめです。
あんずジャムで簡単ヨーグルトバーク
アメリカ発祥のひんやりスイーツ、ヨーグルトバークを作ってみましょう!水切りしたヨーグルトにあんずジャムとブルーベリーを混ぜ、バットに広げて凍らせるだけで完成します。彩りも鮮やかで、口いっぱいに爽やかなおいしさが広がりますよ。驚くほど簡単に作れるので、ぜひ試してみてくださいね。
牛肉とズッキーニのあんずジャム炒め
意外な組み合わせがクセになる!?あんずジャムを使った炒め物はいかがでしょうか。牛肉の旨みとズッキーニや玉ねぎの食感、あんずジャムの甘酸っぱさとしょうゆの香ばしさが相性抜群ですよ!フライパンで炒めるだけで簡単に作れるので覚えておくと便利な一品です。あんずジャムが使い切れなくて困っているときに、参考にしてみてくださいね。
あんずの魅力をしっかり楽しもう
今回は、あんずの魅力やおいしい食べ方、おすすめのレシピをご紹介しました。生のあんずが出回る期間は短いですが、さまざまな食べ方で一年中お楽しみいただけます。ぜひご紹介したレシピを試してみて、あんずの豊かな風味を存分に楽しんでくださいね。
