「けんちん汁」は神奈川県の郷土料理といわれる、根菜類や豆腐がたっぷり入った具沢山のすまし汁です。日本ではおなじみの家庭料理の一つですよね。今回は、そんなけんちん汁の発祥や特徴のほか、豚汁との違いについて詳しく解説します。記事後半でご紹介するレシピも必見ですよ!ぜひ参考にしてみてくださいね。
神奈川県の郷土料理「けんちん汁」ってどんな料理?由来や特徴、レシピもご紹介!

けんちん汁とは?発祥、由来について
けんちん汁は、神奈川県発祥の郷土料理として有名ですが、その歴史は諸説あります。
一つ目は、神奈川県鎌倉市にある建長寺というお寺の僧侶が作っていた精進料理が由来という説です。建長寺で作っていたことから、「建長汁」と呼ばれていたものがなまって「けんちん汁」となったといわれています。建長寺は鎌倉時代に建てられたお寺なので、当時から作られていたけんちん汁は700年以上も前から存在していたということになります。
二つ目は、中国の精進料理である「普茶料理」の一つに「巻繊(けんちん)」と呼ばれる料理があり、それが語源となっているという説です。「巻繊(けんちん)」とは、細かく切った根菜や豆腐を湯葉巻きにしたもので、そこから派生した料理がけんちん汁やけんちん煮などになったとされています。
そんなけんちん汁ですが、実は神奈川県以外にも岩手県、茨城県、大分県の郷土料理にもなっていて、日本全国で長く親しまれているんですよ。豆腐や麺が入っているなど、地域によって入れる具材に違いがあるほか、「1月半ばの小正月に女の人が休めるように」とけんちん汁を大量に作って温めなおしながら食べるという習慣のある地域もあるのだそうです。同じけんちん汁でも地域差があるのは興味深いですね。
けんちん汁の特徴とは?材料や味つけ、豚汁との違い
先ほど解説したように長い歴史のあるけんちん汁ですが、一体どのような料理なのでしょうか。以下で詳しく見てみましょう。
けんちん汁の具材
けんちん汁とは大根、人参、里芋、ごぼう、こんにゃくなどの根菜類を中心とした野菜と、豆腐や厚揚げも入ったすまし汁です。一般的にごま油で具材を炒め、出汁を加えて煮込み、しょうゆで味を整えて仕上げます。けんちん汁の出汁は、素朴な昆布だしや干し椎茸のだしが多いようです。
根菜類と豆腐が主な具材ですが、きのこ類や青菜が入るレシピもあります。ほかにも、けんちん汁をアレンジした料理として、けんちんうどんやけんちんそばも有名です。元々は精進料理であったという説もあって、基本的に肉や魚は入りません。また、ほかの精進料理を作ったときに余った野菜の皮やくずを、無駄なく工夫して食べるように考えたられたのが「けんちん汁」であるという説もあります。
豚汁との違い
けんちん汁と似ている料理に「豚汁」がありますが、豚肉の有無が大きく異なるポイントです。また、けんちん汁の味つけはしょうゆ、豚汁は味噌という点も大きな違いになります。使用する具材が似ていること、また、現在はけんちん汁に豚肉を入れたり、豚汁の具材をごま油で炒めるなどアレンジレシピなどもあるため、違いがわかりづらくなってきているようです。
けんちん汁の食べ方、作り方について
けんちん汁は具沢山なので、おかずが少なくても献立が成り立つメニューです。ごはんとよく合い、おかずのような感覚で食べられます。
作り方は簡単で、野菜を切ってごま油で炒めて豆腐と一緒に出汁で煮込み、しょうゆで味をつけるだけです。だいこんや人参はいちょう切りまたは半月切り、里芋などの芋類は輪切りにします。ごぼうは小さめの乱切りか薄切りがおすすめです。 豆腐は、出汁を加えた後に入れて形を崩さない作り方もありますが、野菜を炒めるときに一緒に加えてつぶしてもおいしく仕上がります。水切りをした木綿豆腐を手でちぎって加え、ポロポロにするのがけんちん汁の一般的な作り方です。
アクを丁寧に取り除き、野菜が柔やわらかくなったのを確認したら、しょうゆや塩、みりんでお好みの味にととのえましょう。ネギや絹さやなどをのせて盛り付けると見栄えがよくなります。アクセントが欲しい場合は、七味唐辛子や柚子胡椒を入れるのもおすすめですよ!
ちなみに、けんちん汁が余ってしまったときは、炊き込みご飯や和風カレーにアレンジすることもできます。作りすぎてしまったときに、ぜひ試してみてくださいね。
けんちん汁のレシピをご紹介
けんちん汁は、簡単に作れて野菜も食べられる体に優しいメニューです。同じけんちん汁でも、具材や味つけによってさまざまなレシピがあります。今回はおすすめのレシピをピックアップしたので、参考にしながらさっそく作ってみましょう!
まずは、定番の作りやすいレシピをご紹介します。シンプルな具材と一番だしの風味豊かなやさしい味わいのけんちん汁です。だしパックや顆粒出汁も便利ですが、昆布とかつおの一番だしで作るけんちん汁は絶品ですよ!だしは意外と簡単に取れるので、定番の作り方を押さえておきたいという方は、まずこちらのレシピを試してみてくださいね。
寒い日におすすめ!お腹も心も満たされる、たっぷりの根菜と豆腐がも入った具沢山のけんちん汁です。具材はごま油で炒めるので、味つけはシンプルでもコク深い味わいに仕上がります。ご紹介している具材のほかにも油揚げや白菜、きのこ類もよく合うので、アレンジも楽しんでみてくださいね。
けんちん汁に切り餅を加えた、お雑煮のようなボリューム満点のレシピはいかがでしょうか。切り餅に野菜とだしの旨味が染みて、たまらないおいしさ!切り餅はひと口大にカットしてから煮込むので、食べやすく仕上がります。食べごたえを出したいときにおすすめのレシピです。
かつお出汁で作るあっさりとしたけんちん汁もおすすめ!里芋が煮崩れることによってとろみがつき、やさしい味わいを楽しめますよ。味つけがシンプルな分、野菜の風味や旨味をより一層しっかり感じられる一品に仕上がっています。ぜひ試してみてくださいね。
神奈川県の郷土料理として知られているけんちん汁を作ってみましょう!
今回は、けんちん汁の歴史や由来、特徴についてまとめました。同じけんちん汁でも、味つ付けや具材によってさまざまな作り方があります。定番の家庭料理なので、ぜひお気に入りのレシピを見つけてみてくださいね。
